お姉さんになった先輩

Pocket
このエントリーをはてなブックマークに追加

こんにちは、奥家 耀介 です。


ある時、先輩がお姉さんになった実話。今日はそんな話。

ちょうど25年前の春、新人として入社した年、会社の職場先輩制度により 5歳年上の先輩が僕の面倒見係として紹介された。

よろしくー」 。 色白で長身細身の先輩は、ITがなんたるかが全く分かっていなかった新人の僕から見ると、経験豊富で自信に満ち溢れた雰囲気がすごくかっこよく見えた。

でも、何かの違和感が少しあったのは覚えている・・・。ただそれが何かは当時は分からなかった。

入社して1年が経ち、そこそこプログラミングに慣れてきた頃、社運をかけたプロジェクトが舞い込んできた。

短納期のプロジェクトだった為、 皆、週に2・3回は徹夜した。寝るところは社内にあるソファしかなく、年功序列とばかりに最年長の先輩から優先確保された為、僕と先輩は机の下の床に寝ることが多かった。

夜中の1時ぐらいだろうか、横に寝ていた先輩が立ち上がって部屋から出て行った。「先輩トイレかな・・・、俺もしたくなってきたし、いこーっと」。そう思った僕は、先輩の後に続いてフロアの男性トイレに向かった。ドアを開けたら先輩が居たので「ちーっす」と軽く挨拶したら、僕の存在に気付いた先輩はなぜか少し狼狽した雰囲気だった。「どうしたのかな? 先輩・・・」でもまだその時は先輩の異変に気付いていなかった。

徹夜続きだったそのプロジェクトも落ち着き、2年目の夏、僕は1年ほど先輩とは別のプロジェクトにアサインされた。

職場先輩制度は1年間なので、もう先輩の支援をもらわなくてもよかったけど、やさしい先輩は時折メールをしてくれた。

体調大丈夫か? 進捗状況はどうだ? 何か技術的に困ったことはないか?」などなど、色々心配してくれる先輩に甘えて僕もメールで色々相談事をしていた。


そんなやりとりがしばらく続いてその年の冬。ボーナスも出たのでお礼がてら先輩を飲み会に誘った。お酒を飲むのが好きな先輩は飲み会が好きだったから、メールで誘った当初、すぐ返信が来るものと思ったが、なぜかなかなか返信が来なかった。来てもあれこれと都合が悪いとかで日程調整がつかなかった。

ただ、僕が当時付き合っていた彼女が両親の病気の関係で実家に帰るということになり、今後彼女との付き合いをどうするか悩んでいるので相談にのってほしいと伝えたところ、都合をつけてくれた。

忘年会のシーズンまっただなか、僕は先輩と二人でよく行っていた居酒屋に向かった。時間の厳しさを教えてくれた先輩だったから、予定した時間の20分前に到着していた。

出会ったその瞬間、僕は新人の時に感じていた違和感が何なのか全てが繋がった。先輩は髪を肩まで伸ばし、薄い化粧をして、胸のあたりは少々膨らんでいた。そう・・、先輩は女になろうとしていたのだ。(いや、元々なっていたのが正しいのか?)

よう!」そう・・・、姿は変われど、1年前の先輩のノリと声は変わっていない気がした。「っち、ちーっすぅ」小さな声で挨拶したものの明らかに動揺の顔が出ている僕に先輩は少し顔がこわばりながら「いや・・・分かるよね?」と言った。

そう先輩の髪は伸び、胸が膨らんでいた。そして少し化粧をしており、大きな目は色気のある目になっていた。元々色白の先輩だったから、不思議と気持ち悪いとは思わなかった。

そこから僕の彼女の話に入る前に、なぜ先輩が変わったのか、いや、正しくは最初からそうだったがなぜ隠していたのかを話してくれた。当時はLGBTなんて言葉がなかったし、心の準備もしていなかったから世話になった先輩の前で少々失礼な反応をしたかもしれない。が僕は僕なりに先輩を必死に分かろうとしていた。

先輩は小さい時から、女性の心をもっていたらしい。そうトランスジェンダーという。成長するにつれ次第に自分の男像がみんなと違う、さらには自分の性の違和感にも気づき始め、ただただ悩んでいたそう。当時はトランスジェンダーという言葉すら聞いたこともなく、知られているのはテレビの中の“オカマ”くらいだったから。何かのドラマで“性同一性障害”の役を見て『これだ!』と確信したそう。

でも、世の中そんなにうまくいかなくて、やっぱり自分を隠しながら生きて来たけど、でも今となっては社会が認めてくれる風潮になったので、思い切ってホルモン治療を始めたとの事。

でも、出会った時より先輩は輝いて見えた。小さい頃からずーっと悩んでいた先輩は、晴れ晴れとした雰囲気だった。そんな先輩を僕は変わらず応援したいと思う。

よかったね先輩!


本日はいつもと違った記事でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。












Sponsored Link